読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

山崎豊子 「二つの祖国」

読み始めてから1ヶ月近くかかって、さっき読了。
下巻はこの週末に一気に読んだわけですが。


二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)


(1986/11)
山崎 豊子

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二つの祖国〈中〉 (新潮文庫)
二つの祖国〈下〉 (新潮文庫)

作者の山崎豊子さんは大正13年生まれ。
同じく好きな作家である宮尾登美子さんは大正15年生まれ。
お二人とも私の祖母と、ほぼ同年代であることが、好きな作家である理由のひとつです。
(もちろんそれだけじゃないけど。)
とにかく、このお二人が書かれる昭和のお話というのが、何かひとごとではないというか、自分の家族が歩んできた時代を見る思いがするというか、惹かれてしまうのです。

この作品は1984年のNHK大河ドラマ山河燃ゆ」の原作でもあります。
もう25年も前!自分は放送当時小学校4年生で、中身は覚えていないものの、タイトルだけは何となく覚えてました。

アメリカの日系2世、天羽賢治(あもう けんじ)を主人公に、太平洋戦争で引き裂かれる家族の苦悩や、原爆の残酷さ、勝者が敗者を裁く東京裁判の理不尽さなどが描かれます。

日系人ではなくとも、自分の家族(祖父母)が体験した太平洋戦争とはどんなものだったのか。
遠い歴史の話ではなく、確かに自分に繋がる過去の出来事を知っておきたい、という思いで、長かったですが、頑張って読みました。

戦前の日本では農家の四男坊五男坊ともなれば相続できる田畑もなく、それならば、と外国への移民を決意する人も多かったこと。
移民した日本人たちが、過酷な環境の中で苦労に苦労を重ねて仕事を得、子を育てていたこと。
それでもアメリカではジャップと蔑まれ、日本に帰れば移民、移民の子と後ろ指を差されること。

太平洋戦争開戦後に強制収容所に入れられ、渡米1世だけでなく、アメリカ国籍を持つ2世までもが合衆国への忠誠を試され続け、命がけで合衆国への忠誠を示すことを強いられ、それは戦後も続いたこと。

今まで何となく知っていたような、知らなかったような、もう一つの日本人の歴史を知りました。

また、21世紀の現代でも、世界では戦争や紛争によって、血を分けた家族が一緒に暮らせない状況が起こり続けていることを思いました。
テレビの映像だけでは知りえない、極限状況での心理、家族で交わす言葉は、小説の力で知ることができます。

賢治、チャーリー、勇、忠、エミー、梛子・・・といった日系2世たちは、ときに戦争のために、ときに個人が持ち合わせた性格や信念のために、皆、苦悩の淵を漂います。
単なる戦争の記録ではなく、群像劇としての深みもあり、そういう意味では読書の楽しさもありました。
(余談ですが、セレブセレブとわめき、中身は空っぽの自己中 = エミー、勝ち組負け組でしか世の中を見られない、軽薄な要領よし = チャーリーは、今、巷にはびこってますねえ。悪いとは言いませんが。)

暗く、重い話ですが、読んでよかった、知ることができてよかったと思います。