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読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

宮尾登美子 「松風の家(上)」

久々に宮尾登美子さんの本。
裏を後、千家を伴家にもじって、茶道の家元である家を舞台にしたお話です。


松風の家〈上〉 (文春文庫)松風の家〈上〉 (文春文庫)
(1992/09)
宮尾 登美子

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千利休を祖とし、家職である茶道を永く営んできた後之伴家ですが、時代が明治に変わり、天皇が東京に移られた後の京都に残され、生活は困窮を極めています。
(今では想像できないくらい貧しい・・・)

上巻では、色々な秘密をはらんだ後之伴家の歴史と主人公・由良子の生い立ちが描かれます。

どんな家にもそれぞれ事情はあるでしょうが、これが四百五十年余りの歴史を持つ旧家となれば、メロドラマにでもなりそうなドロドロした内幕もあったりします。
けれどもそれがありきたりのドロドロに堕ちないのは、まずは作者の流麗な文体に拠るところが大きいと思います。
それから、登場人物それぞれが、胸の内には暗い秘密や思惑を抱きながらも、それをあからさまに口に出したりはしない分別を持ち合わせていることもあると思います。
宮尾作品の登場人物(特に女性)にみられる慎み深い態度というのは尊敬に値します。

由良子にしても、生みの母への思慕が熱く迸り出そうなのを、育ての母への尊敬の念で抑え、どちらの母に対する想いも決して偽りのないものなのです。
この母子関係、「櫂」の綾子との比較で読むとなかなか興味深いです。
綾子のモデルは作者自身と言われていますが、綾子もののシリーズでは描かれなかった、作者のもう一つの母への想いというものを垣間見た気がします。
(こうして色々と読むことで作品同士が繋がったり理解が深まったりするのは楽しいですね)

櫂 (新潮文庫)櫂 (新潮文庫)
(1996/10)
宮尾 登美子
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