読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

宮尾登美子 「松風の家(下)」

「松風の家」、下巻も読了しました。
主人公の生き方は最後まですがすがしく、途中何度も感動した場面がありましたが、特に用意した最後にははっとさせられ、もう一度泣きそうになりました。
読み終えたあとにはしみじみとした感慨が残りました。


松風の家〈下〉 (文春文庫)松風の家〈下〉 (文春文庫)
(1992/09)
宮尾 登美子

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よく「明治生まれは気骨がある」なんて言い方をしますが、最近あまり聞きませんね。
(考えてみれば今100歳の人で明治42年生まれ。。)
我が家でも曽祖父母を評して「明治の人だからねー、強かった」と。

この作品の主要な登場人物たちも皆明治もしくは幕末の生まれ。
皆それぞれに信念と忍耐強さと気高さを持ち合わせた立派な人ばかり。
苦境に立たされ、今にも風に飛ばされそうだった家を見事によみがえらせた努力の人たちです。

ここで描かれる「家」は単なる建物でも家族のことでもなく、まるで家そのものにも意思があるかのように時には家人を苦しめ、時には優しくはぐくむものでもありました。
後之伴家だけでなく、紗代子の実家、仙台の旧家加藤家もそう。

舞台を仙台に移した紗代子の章は、京都とはまた雰囲気が違い、若く溌溂とした主人公の魅力もあって、古い名作映画を見ているようでした。

家元宗匠から紗代子の母辰寿に「朝陽」と銘のついた楽茶碗が贈られた場面、なにか胸に迫るものがあってとても印象的でした。
物語の中で茶道具が効果的に配されているのは、(流派は違えど)茶道を習っていた自分には読んでいてとても楽しみでした。
「帯」と銘のついた茶杓にしても。