池井戸潤 「シャイロックの子供たち」
シャイロックというのはシェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場する強欲な金貸しの名だそう。
作者の池井戸氏はもと銀行員で、この本もとある都銀の支店を舞台にしたお話です。
シャイロックの子供たち (文春文庫) (2008/11/07) 池井戸 潤 商品詳細を見る |
この人の小説で今までに読んだことあるのが「果つる底なき」と「架空通貨」だけで、しかもだいぶん前のことで中身は忘れてしまいましたが、以前はもっとハードボイルドなイメージだったんです。
が、この作品はどちらかというとウエット。
お仕事頑張ってる会社員の人なら、1度ならずじわっと来る場面があるのではないでしょうか。
社会と会社と個人のせめぎあいの中で何とか落としどころを見つけて、必死に頑張ってる人たちへの作者の眼差しは温かく、でも世間というか会社というかはそんなに甘いものではなく、頑張ったからといって別に褒められるものではなくて、成果がすべてなんですよね。
この本は、章ごとに主人公が違ってて、短編集のように読めなくもないのですが、各章の主人公たちは皆同じ銀行で働く人で、同じ人物が色んな章にわたって登場します。
話も中盤に差し掛かったところで、とある事件が起こるのですが、その真相は本編の最後まで引きずりますから、推理のほど、お忘れなく。
そして最後の最後でとある人物の人物像がひっくり返ります。
毎日顔を合わせている職場のメンバーだと、お互いのこと知り尽くしてるような気にもなってきますが、実はその人の一部分しか見えてないんだよ、と教えられたような。
ちょうど今日は勤労感謝の日です。
働く旦那さん、お父さんたち、お疲れ様です。ありがとう。