読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

磯田道史 「武士の家計簿」

ずい分前のベストセラーですが・・・東京からの帰りの車内で読みました。
今回堺雅人さん仲間由紀恵さんの主演で映画化されるということで、本屋さんでも平積み状態。

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)
(2003/04/10)
磯田 道史

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映画「武士の家計簿」のオフィシャルサイトはこちら→http://www.bushikake.jp/

江戸時代、「御算用者(ごさんようもの)」として加賀藩に仕えていた猪山家の当主がつけていた約36年分の家計簿を読み解き、あまり知られていなかった下級武士の日常を鮮やかに描き出したのが本書です。
どんな興味深いことが書かれていたって、読む人がいない古文書はただのボロ紙だと思う。
反対に言えば、単なるボロ紙を丹念に読み解き、エクセルでデータベース化し、新書として出版されたからこそ、私たちのような研究者ではない一般の人が「ふむふむ」と読んで楽しめるんですね。

まあ、当時の武士が受け取っていた禄(報酬)がどれくらいで、生活費がどれくらいかかって・・・というのを現代の貨幣価値に当てはめると云々みたいな面倒くさい検証部分はさらーっと読み流しましたが。
とにかく、筆者が研究対象に寄せる思いみたいなものがヒシヒシと伝わってきて、それがまた猪山家の様子を生き生きと伝えています。

猪山家代々の職場であった加賀藩御算用場は百万石の実務行政を一手に担い、何百人という武士がいっせいに算盤をはじいていたのだそうな。
それを読んでからというもの、パソコンのCPU(中央演算処理装置)では数百人の小さいお侍さんがいっせいにソロバンをはじいている・・・という困った妄想がちらついて仕方ないのですが。

幕末から明治へ。
学校でも習い、本や漫画やテレビでもよく取り上げられる時代ながら、下級武士の一家を通して見るととても新鮮な驚きにあふれていて、なるほど面白い1冊でした。