読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

岩城宏之 「オーケストラの職人たち」

今日6月13日は指揮者・岩城宏之さんの命日なのだそうです。
そんなことは全く存じ上げず、先日たまたま手に取った本を、たまたま今日読み終えました。

オーケストラの職人たち (文春文庫)オーケストラの職人たち (文春文庫)
(2005/02)
岩城 宏之

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オーケストラ・アンサンブル金沢の初代常任指揮者でいらっしゃったマエストロ・岩城氏は世界中のそうそうたるオーケストラを指揮してこられたまさしく巨匠なのですが、私の知る限り金沢の音楽ファンは親しみをこめて皆「岩城さん」とお呼びしているようです。
恥ずかしながら私はコンサートに目覚めるのが遅く、岩城さんのコンサートは聴きにいったことがないのですが、本書からも十分マエストロの人柄が偲ばれます。

あ、たまたまついでに、本書で知った面白いお話。

(1)今年のラ・フォル・ジュルネ金沢のチラシにも登場していた、金沢学院大学所蔵のピアノ。
なんと旅順陥落の際にロシア軍のステッセル将軍が乃木大将に送ったものなのだそうです。
もしかしたらこれは有名な話なのかな?
去年の秋、私は夢中になって「坂の上の雲」を読みふけっていたのですが、こんなところでステッセル将軍の名前が出てくるとは夢にも思っていませんでした。

(2)岩城さんの奥様はピアニストだそうで、ピアノを買い替えられた際、30年来愛用されてきたヤマハのセミグランドをオーケストラ・アンサンブル金沢の練習場に寄贈されたとのこと。
もしかして、その後完成した石川県立音楽堂の地下の練習室(一般でも借りられます)にある、あのピアノのことでは?! とちょっとドキドキ。

楽器には「数奇な運命」という言葉がよく似合います。

えー、大分脱線しているのですが、本書はオーケストラを陰から支えている楽器運送業とか調律師とか写譜屋さんとか、色んな人たちのことをマエストロ自らが突撃取材(!)を敢行して、はたまた貴重な体験談から紹介されている、実に楽しい本です。

と、読書の記録はここまでなのですが、ちょっと自分のこと書かせてくださいね。
色々と思い出したので。


私は中・高と吹奏楽部でバス弾きをやっていました。
高校のときに在籍していた吹奏楽部が面白いところで、何でも自分たちで運営するのがカッコイイという気風のところでした。
最近の部活動といえば顧問の先生や父母の会が色々と手伝ってくれるところが多いと思うのですが、何もなかったですね(笑)

ですから演奏や選曲(コンサートの構成)だけでなく、本書に出てくるような裏方の仕事も自分たちでやりました。
年に1回のコンサートでは第3部にサックス奏者のE先生が毎回クラシックの名曲を吹奏楽用にアレンジして自ら振って下さっていたのですが、自分のパートの楽譜は自分で(勉強そっちのけで)写譜していましたし、楽器の運搬も(トラックの運転以外は)自分たちで。
ステマネ(ステージマネージャー)と、第1部、第2部の指揮はOBの現役大学生。
E先生やOBの先輩方との連絡も、おっかなびっくり自分たちでやってました。
また、1部から3部まですべての曲の下振りも現役の部員たちで分担してやっていました。
あと、プログラムに載せる広告の依頼や集金もチャリンコで駆け回ってましたし。

とても進学校の受験勉強の片手間にできる量ではなかったので、途中で去っていく仲間も多かったです。
でも、今思えば何というぜいたくな社会勉強をさせてもらっていたのだろうと、ぬるく見守ってくれていた周囲の大人たち(先生とか家族とか)には感謝の気持ちでいっぱいです。