奥田英朗 「ガール」
出版された当時、あちこちの書評で大絶賛されていたのを見て、ずっと読みたかった短編集です。
1月にやっと文庫化されたので、買ってありました。
ガール (講談社文庫) (2009/01/15) 奥田 英朗 商品詳細を見る |
作者の奥田英朗さんといえば先日「オリンピックの身代金」吉川英治文学賞を受賞されてましたね。
さて、「ガール」ですが、帯に
"すべての女性に「これって、私のこと!」と言わしめた爽快ベストセラー"
とありますが、全くもってそのとおり。
それぞれの短編の主人公たちは、30代の会社員。
スタンスはそれぞれですが、勤続年数も10年を超えて、すっかり会社の1部になってるように見えますが、内面には迷いや揺らぎもあったりして・・・
その心理描写が見事!
紋切り型の「ヒステリー」「図々しい」「カマトト」・・・な見苦しい女性がでてきて、何か失敗する、っていうありがちなお話になっていないから、まさに爽快!気持ちよく読めました!説教めいた話もないし。
コーヒー1杯でお話ひとつ。2時間もあれば全部読める量ですので、未読の30代女性とこれから30代になる女子とかつて30代だった女性はぜひ。
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「神様はよくしたものだと思った。気の合わない人間はどこにでもいるが、きっと同じパーセントだけ、価値観の合う男女を配してくれているのだ。」(「ヒロくん」)
「今は『もう三十四』だけど、五年たったら『あのときはまだ三十四だったんだ』って思うんじゃないかな」(「マンション」)
「生涯一ガール」(「ガール」)
「人はそれぞれだ。しあわせかどうかなんて、物差しを当てること自体が不遜だ。」(「ワーキング・マザー」)
「会社は楽しくていい。若者がいるし、おじさんもいる。そして自分たちのように微妙な年齢の女たちも―。」(「ひと回り」)