宮尾登美子 「陽暉楼」
電車で東京行くには、行きと帰り用に2冊も文庫本を持っていかないといけないのです。
そう考えると移動時間長いですね。
行きに読んでった本は宮尾登美子さんの「陽暉楼」。
陽暉楼 (文春文庫) (1998/03) 宮尾 登美子 商品詳細を見る |
戦前の土佐で舞の名手とうたわれた芸妓・桃若こと房子が主人公の、何とも哀しく救いようのないお話。。
生活困窮のためとはいえ、実の親が娘を売るというのがまずおかしい!
戦前にはよくあることだったのかな・・・今の虐待とかも酷いけど、人身売買ですよ。
今も昔も酷い親はいるってことか。
好きな舞を習えるから、と言いくるめられて子方屋へ売られていった房子は、それでも一途に踊りの道をきわめるのですが、生涯に一度、好きになってしまった男性への思慕から運命は思いがけない方向へ動き出します。
房子が一心に舞に打ち込む場面が好きです。
あとは一見華やかな花柳界の地獄の沙汰も金次第といったあざとさ、芸妓同士でさえなかなか心を打ち解けることができない競争社会。
金で縛られ自由のない身で、ほとんど孤立状態になりながらも自分を貫こうとした房子の一途さは強さなのか弱さなのか・・・私は強いと思います。
最初に救いようのない話と書いてしまいましたが、読むと今まで知らなかった世界(しかも戦前までたしかに実在し、今だって世界のどこかに存在する)を知ることができますし、例によって文章は流麗。
読んでよかったです。