森絵都 「いつかパラソルの下で」
爽やかな読後感の、なかなかよいホームドラマでした。
いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5) (2008/04/25) 森 絵都 商品詳細を見る |
ネタバレは極力したくないんですけど・・・
変人と言っていいくらい厳格な父に育てられた25歳の女性が主人公。
今は実家を出てぷらぷらとその場しのぎの刹那的な生活を送っています。
物語は兄と妹と3人で亡くなった父の一周忌の相談をするところから始まります。
中盤、一体このお話はどの方面に流れていくんだ?!と面食らう展開を見せ、その直後、潔くて力強くて心地いい裏切りにあい、最後はちょっとしみじみとした感じに終わりました。
誰しもが抱えているコンプレックスやすれ違いなんかを、トラウマだ、親の影響だ、アダルトチルドレンだ、と理由付けしている(それで心の安定を得ようとしている)のも珍しくなくなってしまいましたが、主人公いわく、それは親の育て方のせいでも先祖から受け継がれた血のせいでもなく、自分自身のせいですらなく、
「なべて生きるというのは元来、そういうことなのかもしれない」と。
なんて潔くて力強い宣言でしょう。
ここの場面が一番好きでした。
それからやっぱり、家族っていいなあ、きょうだいっていいなあ、って思いました。
たわいも無いことでわいわい言い合っているのがいいんですね。
難しいことばっかり考えなくてもね。