読んだり食べたりした記録

旧ブログ「おやつ、読書・・・ときどきバレエのこと。」

沢木耕太郎 「彼らの流儀」

私が講師をしていたとき、高校2年生になって最初に扱う現国の教材が、河合隼雄の「心の鉱脈」
で、その次が沢木耕太郎の「風の学校」でした。
どちらも新学期にふさわしく、どこからか力が湧いてくるような内容でしたが、特に好きだったの
が沢木さんのほう。
井戸掘りで国際貢献をする男性のエネルギーの源を捉えたノンフィクションでした。
ルポライター沢木耕太郎といえば「深夜特急」。
これまた大好きで、当時何度も読み返していました。

さて、その沢木さんの「風の学校」が収められているのが「彼らの流儀」という本。

彼らの流儀 (新潮文庫)彼らの流儀 (新潮文庫)
(1996/03)
沢木 耕太郎

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先日あうん堂さんでハードカバー(絶版)のほうを見つけて懐かしさのあまり購入。

「彼ら」の中には特に有名人や偉業を成し遂げた人ばかりではなく、どこにでもいるような普通の人もいます。
有名無名の人たちの人生が見事に切り取られて収められている本です。
日常の何気ない一瞬にふと気づいたこと。
私には想像もつかない人生を送っている人。

私はうまく説明できないんですけど、筆者自身による「あとがき」が上手く言い表していると思います。
『現代を生きる彼らのひそやかな「生」の中には、彼ら自身も気づいていない不思議な意味を持った時間が存在していた。それは、たとえどれほど短く束の間のものであれ、彼らの「生」の全体を鮮やかに映し出すものであることが少なくなかった。・・・(略』

特に印象に残ったのは「胡桃のような」っていう題名の一篇。
まあ、自分がその時に置かれている状況によって印象に残る章って変わると思いますが。
そういった意味でも、10年単位で読み返せる佳作が本棚にあるというのは幸せなことです。

そうそう、久しぶりに読んだ「風の学校」。
当時と同じところで胸が熱くなりました。
『いま眼の前にある運命を素晴らしいものと受け止め、その運命を充分に生き切ってさえすれば、次にすべきときは必ず向こうからやってきた。』
『食べるために働くのではない。働いているから食べるのだ。』
いいですねー。腹ペコになるまで働くかっこいい大人でいたいものです。