小川洋子 「ミーナの行進」
谷崎潤一郎賞受賞作、小川洋子さんの「ミーナの行進」読みました。
賞にふさわしい、うつくしいお話でした。
ミーナの行進 (中公文庫) (2009/06) 小川 洋子 商品詳細を見る |
親戚の家にあずけられた主人公が、体の弱い従妹のミーナやその家族たちと過ごす1年を回想するお話です。
こう書くとちょっと「TSUGUMI」を思い出しますね。よしもとばななの。
舞台は芦屋、戦前に立てられた立派な洋館、というだけで、ため息が漏れそうです。
いやその前、冒頭に出てくるドイツ製乳母車でもう、心をわしづかみにされてました。。
ものすごくお金持ちの一家はみんな心が優しくて、そっと寄り添うようにして幸せに暮らしています(伯父さんは微妙だけど)。
ちなみにローザおばあさんはドイツ人で、お父さんはハーフ、ミーナはクオーターです。
家族のみんなも個性的で素敵なのですが、庭の住人「ポチ子」がまた愛おしいんです。
(これから読む人のために、ポチ子のことは詳しくは書きませんが)
そもそも従妹の家って一番身近な他人の家ですよね。
自分の家との習慣の違いに思わず小首をかしげたり、かと思えば何でも素敵に見えたり。
小さいときは遊びにいくとワクワクしてたっけ、と読みながらそんな気持ちも思い出してました。
そして、なんといっても芸術的に言葉が美しいのです。
この辺は好みの問題もあるでしょうけど、設定とかストーリー展開とかではない、言葉そのものの美しさで泣けそうです。
絵画とか音楽とか舞踊とかで、たまに琴線に触れるものに出会ったときと同じく。
純文学だなあ。